乳がんステージ4(末期)からでも治る可能性をあきらめない

breast cancer

末期がんでもできる事があります

乳がんステージ4の末期状態から、乳がんが治る可能性はゼロではありません。

乳がんには種類や状態にあった治療法があり、間違った方法では副作用などで苦しむだけではなく、余命が短くなってしまうこともあります。

まずは、乳がんについて正確なことを知り、どのように治療したら治るのか知り、治療し、最後の最後まで諦めないことが重要です。

末期、ステージ4の乳癌(乳がん)が治る確率を上げる為に知っておくべき事。

末期、ステージ4の乳癌(乳がん)が治る確率を上げる為に知っておくべき事。

乳がんを治すには、乳がんの原因や特徴、症状について知っておくことが大切です。

罹患される方が多い乳がんは治療法も多数存在し、新たな治療法も研究されています。

また、乳がんの種類や特徴によって治療法やお薬も異なりますので、ご自身の状況を把握するためにも、どのような種類があり、どのような特徴があるのか確認しておくことが肝心です。

乳がんの原因について

乳がんの原因について

まだ研究途上であり正確な乳がんの原因は、わかっていません。

しかし、女性ホルモン、生活習慣、生活歴、体質、遺伝子など乳がんのリスクを高める原因が研究によりわかってきました。

遺伝子検査で乳がんリスクが高いとわかったことから、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がん予防の手術(乳房切除術)を受けた記憶のある方も多いことでしょう。

女性ホルモンに関連した要因

女性ホルモンに関連した要因

女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞(らんぽう)ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体(おうたい)ホルモン)」の2種類があります。

女性らしい体をつくるのがエストロゲンで、妊娠を維持するのがプロゲステロンです。

乳がんの発生から増殖に大きな影響があるのが「エストロゲン」です。

現在までに肥満や出産経験がない・遅いなどにより、ホルモンバランスが崩れると乳がんのリスクが高まることが判明しています。

また、更年期障害の治療法であるホルモン補充療法(HRT)は乳がんのリスクを高め、ごくわずかではありますが、低用量ピルも乳がんのリスクを高めるとされています。

なお、月経の周期を作っているのも女性ホルモンで、月経~排卵の間(卵胞期)にエストロゲンの分泌量が増加し、排卵~次の月経までの間(黄体期)にプロゲステロンの分泌量が増加します。

生活習慣・食生活に関連した要因

研究結果によると、肥満は乳がんのリスクを高め、閉経後の肥満は、乳がんの危険性がさらに高まることが判明しています。

反対に閉経後の運動は、乳がんのリスクを確実に低下させますので、肥満を防ぐ食生活や定期的な運動は乳がん対策に大切です。

また、喫煙もほぼ確実に乳がんのリスクを高めます。

喫煙は乳がんだけではなく、肺がんなど他のがんのリスクも高めてしまいますので、禁煙するようにしましょう。

家族歴と遺伝的な要因

家族歴と遺伝的な要因

乳がんには遺伝性のがんが存在します。

乳がん全体の5〜10%程度が遺伝性だと考えられており、多くはBRCA1とBRCA2という遺伝子の変異が関与しています。

女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、BRCA1遺伝子変異を有しておりましたため、遺伝性乳がん卵巣がんHBOC(Hereditary Breast and Ovarian Cancer)と診断され、リスク低減のための手術を受けました。

このように、乳がんには遺伝性乳がんがあり、家族に乳がんを発症した方がいらっしゃる場合、乳がんのリスクは高まります。

さらに、親と娘などのように遺伝的に近いほど、家族に乳がんとなった方が多いほど乳がんのリスクが高まると考えられています。

なお、BRCA1とBRCA2という遺伝子変異は乳がんだけではなく、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんなどの発症リスクが高いことがわかっています。

男性でBRCA2の遺伝子変異をお持ちの場合、乳がんの発生リスクが女性と同程度まで上昇します。

乳がんの罹患率。年齢との相関関係は?

乳がんの罹患率。年齢との相関関係は?

乳がんの罹患率は30代後半から増加し、40代後半から50代前半がピークです。閉経後の60代前半で二つ目のピークを迎えます。

肺がんなど他のがんは40代ごろから増加し70代くらいでピークになります。他のがんと乳がんとでは大きくピークが異なっているのです。

生涯のうちに乳がんになる女性の割合は近年上昇しており50年前には50人に一人でしたが、現在は11人に一人です。乳がんが多くなった原因として食生活の変化などが考えられています。

乳がんの種類と症状

乳がんと診断されると免疫組織化学法という検査でがん細胞を詳しく検査します。

免疫組織化学法ではホルモン受容体が発現しているか、HER2(ハーツー)タンパク質ががん細胞に発現しているか、Ki67(がん細胞の増殖力:活性期にある乳がん細胞の割合)という3つの要素によって、5つのサブタイプに分けられます。 

乳がんのサブタイプ分類 ホルモン受容体 HER2(ハーツー) Ki67(がんの増殖能)
ER(エストロゲン受容体) PgR(プロゲステロン受容体)
ルミナルA型 陽性 陽性 陰性 低い
ルミナルB型 (HER2陰性) 陽性 弱陽性または陰性 陰性 高い
ルミナルB型 (HER2陽性) 陽性 陽性または陰性 陽性 低から高
HER2型 陰性 陰性 陽性
トリプルネガティブ 陰性 陰性 陰性

ホルモン受容体の陽性(+)とは、ホルモン受容体ががん細胞に含まれていた場合を指します。ホルモン受容体が含まれていない場合は陰性(-)です。

Ki67(染色率)とは、増殖中のがん細胞に存在する核タンパクのことで乳がんの増殖能を示す指標です。

Ki67染色率が高いほど、がんの増殖のスピードが速いと考えられており、15〜30%以上が高値です。

また、サブタイプの他にも遺伝性であるかどうか、表皮内癌の一種であるPaget病など様々な種類が乳がんにはあります。

ホルモン受容体陽性乳がん

ホルモン受容体陽性乳がん

乳がんの約7割から8割を占めるのが「ホルモン受容体陽性乳がん」で女性ホルモン(エストロゲン)を栄養として増殖します。

「Luminal(ルミナル)タイプ」や「エストロゲン受容体陽性乳がん」と呼ばれることもあります。

ホルモン受容体陽性乳がんは、がん細胞の増速力(Ki67)の値を考慮して「ルミナルA型」と「ルミナルB型」に分けられます。

ルミナルA型は、がん細胞が増えるスピードが遅い(進行が遅い)特徴の乳がんです。

女性ホルモンでがん細胞が増加しますので女性ホルモンの働きをコントロールするホルモン療法(内分泌療法)が選択されます。

ルミナルB型は、がん細胞の増殖力が速い(進行の速い)乳がんです。

ルミナルB型もルミナルA型と同じくホルモン療法が選択されますが、増殖力が速いため抗がん剤も加えられます。

また、ルミナルB型 (HER2陽性)の場合は、抗HER2療法(分子標的療法)を組み合わせた治療が選択されます。

HER2陽性乳がん

HER2陽性乳がん

HER2陽性乳がんには、ホルモン受容体が陽性の乳がん「ルミナルB型(HER2陽性)」と、ホルモン受容体が陰性の乳がん「HER2型」があります。

もともとHER2陽性乳がんは悪性度が高く増殖の速いがんとして知られていました。

現在では抗HER2療法(分子標的療法)と化学療法(抗がん剤)を組み合わせることで治療効果が良くなっています。

トリプルネガティブ乳がん

トリプルネガティブ乳がん

乳がん細胞のホルモン受容体の発現が陰性で、HER2も陰性なのが「トリプルネガティブ乳がん(Triple Negative Breast Cancer)」です。

トリプルネガティブ乳がんは、女性ホルモンの影響があまりないため、ホルモン療法(内分泌治療)は期待できず、HER2も陰性のため分子標的薬の効果は期待できず、化学療法(抗がん剤)の治療が選択されます。

遺伝性乳がん

遺伝性乳がん

日本人の乳がんの5〜10%を占めるのが遺伝性乳がんです。

血のつながった人(血縁者)に乳がんの方がいらっしゃった場合、家族性乳がんと呼びます。

家族性乳がんで遺伝子が乳がんの発症に強く影響している場合に「遺伝性乳がん」と診断されます。

さらに、遺伝子検査でBRCA1とBRCA2という遺伝子に病的な変異(病的バリアント)がある場合に「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC:エイチビーオーシー)」と診断されます。

また、がん発症前に遺伝子検査でBRCA1とBRCA2という遺伝子に病的な変異が発見された場合もHBOCと判断されます。

遺伝性乳がんのうち約60%がHBOCで遺伝性乳がんの方です。遺伝性乳がんの方、全員がHBOCではありません。

他にはTP53遺伝子(リー・フラウメニ症候群)やCDH1遺伝子が関与する遺伝性乳がんがあります。

誤解されやすいのですが、遺伝性乳がんとサブタイプは別に考えますのでご注意ください。

遺伝性乳がんでBRCA1遺伝子に病的変異がある場合はホルモン受容体とHER2がともに陰性である「トリプルネガティブ乳がん」が約70%を占めます。

BRCA2遺伝子に変化がある場合は、ホルモン受容体は陽性でHER2が陰性の「ルミナルB型乳がん」が約70%を占めます。

炎症性乳がん

炎症性乳がん

乳がんの中で0.5〜2%程度を占めるのが、炎症性乳がんです。乳房の皮膚に炎症のような変化を伴うことから、炎症性乳がんと名付けられました。

発生頻度は稀なのですが、進行が速く予後も悪いという特徴を持っています。

他の乳がんと異なり、炎症性乳がんは以下のような症状を持っています。

皮膚が変化することから、感染症や皮膚疾患と間違われることもあります。

Paget病

Paget病

汗を作り出す汗器官由来の細胞が癌化する表皮内癌の一種がPaget病(パジェット病)です。

赤色調(淡紅褐色~鮮紅色)の斑状の病変として認められます。

パジェット細胞と呼ばれるがん細胞が増殖します。

最初は表皮の中にパジェット細胞が留まり、真皮には及びません。

進行し真皮まで広がってくると、バジェット癌といいます。

なお、パジェット癌も含めてパジェット病と呼ばれることもあります。

Paget病は乳頭や乳輪に発生する「乳房Paget病」と、陰部や腋などに発生する「乳房外Paget病」に分けられます。

Paget病の治療は外科的な切除が原則で、抗がん剤などはあまり効果が認められません。

なお、表皮内に留まっているPaget病は予後が良好ですが、進行した場合の予後はあまりよくありません。

管状がん

管状がん

乳がん全体の約0.2%と、希少な乳がんのひとつが管状がんです。

病気の進行が緩やかで1cm未満でみつかることが多いです。

浸潤性乳がんのひとつでもあり、ホルモン療法が効果的なホルモン受容体陽性であることが多いとされており、腋窩リンパ節転移がなければ予後は良好です。

なお、ホルモン受容体陰性の場合は浸潤性乳管がんと同じ薬物療法が推奨されています。

メデュラリー乳がん

メデュラリー乳がん

乳腺髄様がん(medullary carcinoma:MC)は、希少な乳がんのひとつです。

ホルモン受容体が陰性、HER2が陰性となるトリプルネガティブ乳がんが約80%と多いのですが、予後良好とされています。

希少な乳がんで症例が少ないため確立された治療法はなく、薬物療法が選択されることが多いとされています。

乳がんの浸潤癌と非浸潤癌の違いについて

乳がんの浸潤癌と非浸潤癌の違いについて

乳がんの多くは乳管や小葉という組織の中で、がん細胞が最初に発生します。

がん細胞が乳管や小葉内だけで増えている場合を非浸潤(ひしんじゅん)癌といいます。

がん細胞が大きくなり乳管や小葉の膜を破って外に出てきた状態を浸潤(しんじゅん)癌といいます。

がん細胞がまだ広がっていない状態が非浸潤癌で、がんが進行し広がっていったものを浸潤癌と考えるといいでしょう。

浸潤がんはさらに組織型に応じて浸潤性乳管がんと特殊型に分類されます。

特殊型は浸潤がんの約10%と考えられており、特殊型は組織型(乳がんの組織構造と特徴)に応じて、浸潤性小葉がん、管状がん、篩状がん、粘液がん、髄様がん、アポクリンがん、化生がん、浸潤性微小乳頭がん、分泌がん、腺様嚢胞がんなどに分類されます。

乳癌(乳がん)のステージ別の症状と生存率、余命

乳癌(乳がん)のステージ別の症状と生存率、余命

がんの進行程度を示すのがステージ(病期)です。進行度と呼ばれることもあります。

ステージは0から4までの5つの区分があります。

また、ステージ2は2Aと2Bの2つに分けられて、ステージ3は3A、3B、3Cと3つに分けられています。

乳がんの一般的な生存率と余命

一般的な乳がんの生存率・余命は、ステージが低いほど長く、ステージ1では10年生存率は90%以上あります。

どちらかといえば、乳がんは治癒しやすいがんで、検診で発見されやすいがんです。

しかし、乳がんは再発が多いがんでもあり乳がんの種類によっては進行が速く、余命が短いこともあります。

乳がんステージ0(0期)

非浸潤癌は乳がんのステージ0に該当します。

非浸潤癌は、がん細胞が乳管内か小葉(しょうよう)内にとどまっており転移はありません。

適切な治療で完治を目指せる乳がんで10年生存率も、ほぼ100%と非常に高く予後も良好です。

一般的には「乳房部分切除術」や「乳房全切除術、乳房再建術」という手術が選択され、状況により手術後に放射線療法やホルモン療法を実施します。

乳がんステージ1(I期)

乳がんのステージⅠは、がん細胞の大きさが2cm以下でリンパ節転移や遠隔転移のない状態を指します。

乳がんステージⅠの5年生存率は98%以上、10年生存率でも9割を超えます。

ステージⅠからステージⅢAまでの乳がん治療は手術+薬物療法+放射線療法の組み合わせで実施します。

腫瘍(がん細胞)の大きさが小さくマンモグラフィで石灰化が広がっていない場合は、乳房部分切除術が選択され、手術後に放射線療法、必要に応じて抗がん剤やホルモン療法(内分泌療法)などが選択されます。

乳がんステージ2(II期)

乳がんのステージⅡはステージⅡAとステージⅡBの2つに分けられています。

ステージⅡAは、がん細胞の大きさが2cm以下で腋窩(えきか)リンパ節に転移しており、転移先のリンパ節は固定されておらず動く状態か、がん細胞の大きさが2cm~5cmで転移がない状態です。

ステージⅡBは、がん細胞の大きさが2cm〜5cmで腋窩リンパ節に転移しており、転移先のリンパ節は固定されておらず動く状態か、がん細胞の大きさが5cm以上で転移がない状態です。

乳がんでステージⅡの5年生存率は95%程度、10年生存率は85%程度です。

同じステージⅡでも他のがんよりも生存率が高くなっています。

乳がんステージ3(Ⅲ期)

乳がんのステージⅢはステージⅢA、ステージⅢB、ステージⅢCの3つに分けられています。

ステージⅢAは腫瘍(がん細胞)の大きさが5cm以下で腋窩(えきか)リンパ節に転移し、転移先のリンパ節は固定されて動かないか、リンパ節がお互いに癒着(ゆちゃく)している、もしくは、腋窩リンパ節への転移はないが内胸リンパ節に転移がある状態です。

また、腫瘍の大きさが5cm以上で腋窩リンパ節か内胸(ないきょう)リンパ節に転移がある状態もステージⅢAです。

ステージⅢBは、がんの大きさやリンパ節転移の有無に関わらず、がんが胸壁に固定されているか、がんが皮膚に出たり皮膚が崩れたり、むくんでいる状態です。

しこりのない炎症性乳がんは、ステージⅢBとなります。

ステージⅢCは、がんの大きさに関わらず、腋窩リンパ節と内胸リンパ節の両方に転移があるか、鎖骨の上もしくは下のリンパ節に転移がある状態です。

ステージⅢの5年生存率はおおよそ80%で、10年生存率は63%程度です。

乳がんステージ4(Ⅳ期)・末期の乳がん

乳がんのステージⅣは、がん細胞の大きさやリンパ節への転移の有無に関わらず、乳房以外の部位(骨、肝臓、肺、脳などの臓器)へ遠隔転移が認められる場合です。

ステージⅣの中でも、がんが進行しがんを完治する見込みが無くなった状態が末期乳がんです。

ステージⅣは全身にがん細胞が存在しているような状態ですので、手術は選択されず抗がん剤などの薬物療法が選択されることが多いです。

ステージⅣの5年生存率は40%程度、10年生存率は16%程度です。

乳がんステージ4(Ⅳ期)・末期の乳がんから完治できる?

乳がんのステージⅣであっても、末期であっても完治を目指すことは可能です。

乳がんに限らず末期がんと診断されるには、医師(主治医)が「治癒を目指した治療に反応せず、 進行性かつ治癒困難、治癒不能と考えられる状態」と判断した場合です。

ポイントとなるのは医師が知らない治療法やガイドラインにない治療法は含まれていないという点です。

医師が匙を投げてしまった状態が末期状態ですが、医師が諦めているだけで治らない保証をしているわけではありません。

乳がんの進行速度と自覚症状について。 疾患への理解

乳がんの進行速度と自覚症状について。 疾患への理解

乳がんは女性の中で最も一般的ながんのひとつですから、乳がんの進行速度と自覚症状について正しく理解することはとても大切です。

乳がんの進行は個人差が大きく種類によっても異なりますが、一般的な乳がんは比較的ゆっくりと進行するがんとされています。

ただし、進行速度には個人差があり遺伝的要因や生活習慣、ホルモンバランスなどさまざまな要素が影響します。

乳がんの初期症状と診断。気づくきっかけは?

乳がんの初期症状と診断。気づくきっかけは?

最も有名な乳がんの初期症状は「しこり」で、乳がんに気づくきっかけの4割がセルフチェックです。

セルフチェックの次に多いのが定期検診(マンモグラフィ)です。

しこりとは、皮膚や皮下組織にできる腫瘤(しゅりゅう)のことで体のいたるところにできます。

乳がんのしこりは、硬い、乳房内で動かない、痛みがないといった特徴があります。

セルフチェックでしこりを発見することもできますが、しこりのない乳がんもありますので、「しこりがないから乳がんではない」と判断するのは早計です。

しこりの他にも以下の初期症状があります。

乳がんの多くは乳腺の組織に発生し、乳頭から分泌物として出てくることもあります。

乳頭の根本を軽くつまむことでセルフチェックできますので、確認するようにしましょう。

いずれか症状があれば、医療機関を受診することが大切です。

乳がんの一般的な進行速度

乳がんには多くの種類があり進行速度が速いものもありますが、一般的な乳がんの進行速度は、がん細胞の大きさが1年で2倍になると考えられています。

5mmのがんが1年で10mmになるスピードです。

また、がんのステージによっても進行速度は異なり、ステージが高くなるほど速くなります。

他の臓器にがん細胞が転移しているステージⅣでは進行がとても速くなります。

なお、乳がんの種類や遺伝的な影響で進行速度が速くなることもあります。

乳がんの進行速度と自覚症状の関係。自覚症状が現れるまでの時間は?

乳がんの進行速度と自覚症状の関係。自覚症状が現れるまでの時間は?

ステージ0の乳がんは、しこりを含め自覚症状は、ほとんどありません。

乳がんが進行しステージ1になると、小さなしこりが出てきます。場合によっては乳房の腫れ、分泌物が出てきます。

ステージ1のがん細胞の大きさは2cm以下ですので、ステージ0からステージ1になるまで2年程度の期間が必要です。

ステージが進むにつれて自覚症状が出てくることが多いのですが、ステージ4になるまで自覚症状がない方もいらっしゃいます。

なお、しこりや乳房の変形、乳頭からの分泌物といった症状が乳がんに直結するわけではありませんし、自覚症状がないからといって乳がんではないと言い切ることもできません。

また、進行の速い「炎症性乳がん」もありますので、自覚症状が現れる時間を正確に言い当てることはできません。

乳癌が手遅れになる症状

乳癌が進行すると以下のような症状が出てきます。

乳癌が進行すると、全身に癌細胞が転移することで全身の痛みが出てきます。

しかし、完全に末期状態になってから痛みが出てくることもありますし、乳癌の末期状態になっても自覚症状がないこともあります。

自覚症状を正しく理解する

乳がんの代表的な自覚症状は「胸のしこり」です。

女性ホルモンの影響で触ると痛みを感じる硬いものを感じることがありますが、乳がんのしこりは、痛みはあまりなく、コリコリと硬いことが特徴です。

他にも、胸の左右の形が変化するなどの症状がありますので、普段からご自身で胸の状態を確認し気になる症状があるのなら、早めに医療機関で検査するようにしましょう。

乳癌の再発と転移しやすい部位

乳癌の再発とは、がん治療を実施しがん細胞が確認できなくなった状態から、再びがん細胞が見つかった状態をいいます。

転移とは、最初にがん細胞ができた場所から、がん細胞が移動してリンパ節や骨、肺など他の臓器ががんになったことをいいます。

転移と再発を誤解しないように気をつけましょう。

乳がんの再発と頻出する症状

乳がんの再発と頻出する症状

乳癌を手術で完全に取り除き、がん細胞をすべて取り除けたとしたら、再発することはありませんが、現在の技術では微小ながん細胞を取り逃がしてしまうことがあります。

残ってしまった、がん細胞が時間とともに成長し大きくなった状態が再発です。

乳癌は他のがんと異なり、進行速度が遅い特徴があるため、他のがんでは5年を過ぎて再発が認められない場合は完治とみなされますが、乳癌は10年を経過しないと完治とみなされないケースがほとんどです。

場合によっては、数十年経過してから乳がんが再発するケースもあります。

乳房を温存したか、全切除したかで、がんのできる場所(再発場所)が異なるため症状も異なります。

乳房を温存する部分切除の場合、下記のような症状がでます。

全切除の場合は、次のような症状がでます。

さらに、リンパ節に再発した場合にはリンパ節のあるわきの下や鎖骨、首などのしこりや腫れといった症状がでます。

>再発癌が治る確率とその可能性

乳がんの最も一般的な転移先とその特徴

乳がんの最も一般的な転移先とその特徴

乳がんの場合、リンパ節、皮膚、骨、肺、肝臓、脳への転移が比較的多くみられ、約30%は最初に骨転移がおこります。

乳がんの骨転移は、肘から先の腕や手、膝から下の足に転移することは、ほとんどありません。

腰椎(ようつい)、胸椎(きょうつい)、頸椎(けいつい)といった背骨や、骨盤、大腿骨、肋骨、頭蓋骨、上腕骨に多く転移がみられます。

乳がんから肝臓へ転移した場合、肝臓がんとは呼ばずに「転移乳がん」「肝臓に転移した乳がん」と呼びます。

転移乳がんは、乳がんの性質を受け継いでいる特徴をもっているため、乳がんの治療で使うお薬を使って治療します。

転移による症状は人それぞれです。

転移しても全く自覚症状がない方もいらっしゃいますし、骨に転移した部分の痛み、肺転移の場合は息切れや咳、肝臓の場合はお腹の痛みなどがあります。

>転移癌が治る確率とその可能性

乳癌の症状チェックをしよう!検査方法について

乳癌には、様々な検査方法があります。

乳癌の進行状況だけではなく、豊胸術を受けているかどうかでも検査方法が変わってきます。

症状も含め、チェックしていきましょう。

早期診断の重要性と早期発見・治療のための自己チェック

乳がんの初期は症状がないことが多いのですが、早期発見し治療をすることで完治する可能性が非常に高くなります。

自己チェックするのは月1回。月経終了10日後までに行いましょう。閉経後の方は毎月1日にセルフチェックしましょう。

なお、乳房の外側上部に乳がんは発生しやすいので外側上部を念入りにチェックするようにしてください。

自己チェックポイント

腫瘍マーカーの血液検査

腫瘍マーカーの血液検査

早期乳がんを腫瘍マーカー(血液検査)で発見することは、非常に困難です。

一般健診のオプションにあるCEA、CA19-9、CA125といった腫瘍マーカーがありますが、早期乳がんの場合、正常範囲内になってしまうからです。

さらに、乳がんであっても腫瘍マーカーが正常値となることもありますので、注意が必要です。

一方、術後の経過観察のためにCEAとCA15-3の組み合わせで測定されることが多いです。

また、乳がんの再発や転移癌の場合は、治療の効果をみる参考情報として腫瘍マーカーが使用されることが多いです。

例えば、乳がんに多い骨転移をみるために骨破壊マーカーの1CTPが用いられることが多いです。ALP(アルカリフォスファターゼ)、骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)が使用されることもあります。

視診

視診

乳がんは、乳房の外観に影響を及ぼしますので、医師が目で見て観察する視診という検査が行われています。

視診では乳房の大きさ、形、ひきつれ、腫れ、皮膚のただれ、異常分泌がないか確認します。

触診

触診

乳がんの特徴として「しこり」があります。触診では、このしこりを触ることで確認します。

しこりがある場合は、大きさ、形、硬さ、表面の状況などを確認します。

乳房だけではなく、わきの下や鎖骨の上にあるリンパ節も調べます。

多くの場合、マンモグラフィと併用される検査です。

マンモグラフィ

マンモグラフィ

マンモグラフィは、乳がんの位置や広がりを調べる乳房専用のX線検査です。

2枚の板の間に乳房を挟んで圧迫、伸ばすことで、乳腺の重なりを少なくして、上下や斜め方向から撮影します。

視診や触診では、発見しにくい病変や、超音波検査では発見しにくい微細な石灰化を見つけることができます。

しかし、乳腺の密度が高い方(高濃度乳房)は、異常のない部分が白く見えてしまうため、病変があっても見つかりにくいことがあります。

なお、豊胸術やインプラント(乳房再建)を受けている場合、マンモグラフィは実施することができません。

超音波(エコー)検査

超音波(エコー)検査

乳房にジェルを塗り、超音波を発生するプローブと呼ばれるセンサーを乳房の表面にあてる検査です。超音波検査では、乳腺は白く、乳がんは黒く写ります。

乳房内部の小さなしこりを発見可能で、マンモグラフィでは判別しにくい高濃度乳房でも確認することができる特徴があります。

また、放射線被曝の心配がないため妊娠中や妊娠可能性のある場合でも、検査を受けることができます。

一方で、石灰化(乳がんで乳腺に微細なカルシウムが沈着したもの)を発見することが難しい特徴があります。

細胞診

細胞診

乳がんが疑われるしこりなどの病変部の細胞を採取し、採取した細胞を顕微鏡で調べるのが細胞診です。

細い針を使って細胞を吸引する「穿刺(せんし)吸引細胞診」、乳頭からの分泌物を採取して調べる「分泌液細胞診」、ただれている部分の細胞を調査する「捺印細胞診」などがあります。

細胞診は身体への負担が少ないのですが、乳がんでないのに乳がんとなったり、乳がんなのに見落とされたりすることがありますので、推定診断として実施されています。

組織診(針生検)

組織診(針生検)

組織診とは、細胞よりも大きい組織の一部を採取し細胞の状態を調べる検査です。

細胞診よりも、大きく採取するため局所麻酔を使って行われます。

細胞診よりも正確な診断が期待できるため、確定診断に使用されています。

ばねの力を利用して組織を採取する針生検(コア針生検)と、吸引力も利用して組織を採取する吸引式乳房組織生検(マンモトーム生検、バコラ生検)があります。

MRI検査

MRI検査

乳がんのMRI(磁気共鳴画像)検査は、大きく2つに分けることができます。

MRI乳房検査や乳腺MRI検査、乳房MRIなどと呼ばれ、乳房部分に対して行うMRIと、再発や転移した際に全身の状況を検査するMRIです。

乳房MRIは、早期の乳がんの検出率がマンモグラフィや超音波検査よりも高い精度(4〜5倍)を持っています。施設によっては、造影剤を使用し更に検出率を向上させています。

乳房MRIは、ベッドにうつ伏せに寝て行います。

マンモグラフィと違い乳房を挟みませんので痛みなどはなく、また放射線を使用しないため被曝もありません。

さらに、インプラント(乳房再建)や豊胸術を受けていても検査することができます。

一方、全身の状態を把握するためのMRI検査では、がん細胞の転移状況を検査します。

CT検査

CT検査

CT検査ではX線(放射線)を使い、体の内部を輪切りにした状態を写し出します。CT検査には、造影剤を使わない単純CTと造影剤を使う造影CTがあります。

乳がんが乳房でどのくらい広がっているのか、リンパ節への転移がないか、肺や肝臓、骨などへの遠隔転移がないか、他の病気がないかなどを調べることができます。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィ

骨に乳がんが転移していないかどうかを調べるのが、骨シンチグラフィです。

骨転移が疑われない場合、骨シンチグラフィは実施されないことが多いです。

検査は骨に集まる特性を持った放射線同位元素を含むお薬を注射し、お薬から放出されるガンマ線(放射線)を撮影します。

なお、転移とは関係ない骨折や変形、打撲、関節炎なども異常として現れますので注意が必要です。

PET検査

PET検査

がん細胞にはブドウ糖が集まる特徴があります。このブドウ糖が集まる特徴を使って検査するのがPET検査です。

PET検査ではブドウ糖に似ている性質を持った18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)と呼ばれる放射性薬剤を注射します。

18F-FDGは、がん細胞に多く取り込まれるため、18F-FDGの集まり具合を撮影し画像化します。

1.5mm程度の小さい乳がんも発見できるメリットの他、豊胸術やインプラント(乳房再建)をされていても受けることが可能な検査のひとつです。

なお、PEM検査(乳房専用PET)と呼ばれることもあります。

乳癌治療の方法と費用感

乳がんは症例が多く研究が進んでいるため、様々な治療法が存在します。

一般的な保険による治療法(手術や抗がん剤治療など)の費用には、高額医療制度をお使いいただけますので、自己負担金は少なくて済みます。

一方、保険外の治療は健康保険を一切使用できませんので、自己負担額が数百万円と非常に高額になります。

手術(外科治療)

手術(外科治療)

乳がんの手術(外科治療)には、いくつかの方法があり、乳房再建をどのようにするかも考える必要があります。

また、わきのリンパ節への転移の有無、BRCA遺伝子によっても、選択肢が変わってきます。

選択肢の多い乳がんの手術は、主治医とよく相談して決めるようにしましょう。

費用は、3割負担の方で20〜40万円(窓口に払う金額)です。

部分切除

乳房温存手術とも呼ばれる部分切除は、がん細胞の1〜2cm離れた範囲を含めて切除します。

がん細胞が大きい場合は、術前に薬物療法を使ってがん細胞を小さくしてから行うことがあります。

術後に放射線照射を行うことが多いです。

また、手術後に切除した断面を検査し、断面にがん細胞があった場合(断端陽性)は、追加の手術や放射線療法、場合によっては全摘出へ切り替えることがあります。

全摘術

乳房を全部切除する方法が全摘出です。

がん細胞が広範囲にあるか、多数のがん細胞がある場合で、部分切除では、がん細胞を取りきれないときに採用されます。

多くの方は全摘術後に乳房の再建を望まれます。しかしケースによっては再建ができないこともあります。

乳頭乳輪温存乳房切除術

乳頭乳輪を残して、乳腺のみ切除する方法です。

乳房再建を行うことで整容性が高く期待できますが、がん細胞が皮膚や乳頭乳輪に近い場合は実施できません。

センチネルリンパ節生検

乳がんのがん細胞が、最初に到達するリンパ節が「センチネルリンパ節」です。

手術前にリンパ節への転移が確認されていない方が対象で、手術の途中でセンチネルリンパ節の一部を採取して検査するのが、センチネルリンパ節生検です。

手術前にリンパ節への転移が確認できなくても、手術をすることで約3割の方にリンパ節転移が認められることが知られています。

リンパ節郭清

手術前の検査で、わきの下のリンパ節に転移が認められた場合などに、追加される手術がリンパ節郭清(かくせい)でリンパ節を切除します。

腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)を切除する範囲は、転移の範囲によって決定されます。

リンパ節郭清を実施すると、腕や手が浮腫んでしまうリンパ浮腫など、身体への負担が大きいため、転移があってもわずかなときはリンパ節郭清を実施しないことが多いです。

放射線治療

放射線治療

放射線をがん細胞に当てて、がん細胞にダメージを与えて死滅させる治療が放射線治療です。

乳がんの場合、X線写真を撮影するときよりも強い力の放射線を身体にあてます。

放射線治療の専門医が診察し、放射線の量と場所を決めて消えにくいインクを使って皮膚に目印をつけます。

この目印を基準として1日1回、数十回の照射を行います。

一般に外来で受けられますが、身体の状況が悪かったり、化学療法と同時に実施したりする場合に入院がすすめられます。

放射線治療の副作用には、皮膚が赤くなる、かゆくなる、ひりひりする、水ぶくれのようになる、肺炎、のどの違和感などがあります。

保険適用の放射線治療の費用は、3割負担で15万円程度です。

なお、乳がんに対しての陽子線や重粒子線といった放射線治療は、研究途上です。

薬物療法

薬物療法

乳がんの薬物療法は、下記の3つの目的で実施されます。

どのお薬を使用するかは、がん細胞の性質(ホルモン受容体の有無やHER2タンパクの発現の有無)、再発リスクなどを考慮して決定します。

薬物療法の費用は、どのお薬を使用するかで大きく変わり、3割負担で4〜240万円程度です。

内分泌療法(ホルモン療法)

ホルモン受容体陽性の乳がんに適しているのが内分泌療法です。

女性ホルモンであるエストロゲンを減らすLH-RHアゴニスト製剤(閉経前)とアロマターゼ阻害薬(閉経後)が使用されます。

また、がん細胞がエストロゲンを取り込むのを妨げる抗エストロゲン薬があります。

脳の下垂体からの指示でエストロゲンは卵巣でつくられます。下垂体の動きを抑えてエストロゲンの分泌を減らすのがLH-RHアゴニスト製剤(卵巣機能抑制薬)です。

LH-RHアゴニスト製剤は皮下注射薬で1カ月毎、3カ月毎、6カ月毎に投与します。

閉経後は卵巣ではなく副腎皮質などから分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンからエストロゲンがつくられるようになります。

アンドロゲンからエストロゲンに作り変えられる課程で、脂肪細胞などにあるアロマターゼという酵素が用いられます。このアロマターゼの動きを阻害することでエストロゲンの量を低下させるのがアロマターゼ阻害薬です。

抗エストロゲン薬は乳がん細胞内のエストロゲン受容体とエストロゲンが結び付くのを妨げ、エストロゲンの代わりにエストロゲン受容体にくっつくことで、がん細胞の増殖を抑え、がん細胞死を誘導します。

内分泌療法には、ほてり、落ち込み、頭痛、骨粗鬆症などの副作用があります。

化学療法(抗がん剤治療)

抗がん剤によって、がん細胞を死滅または増殖を抑える療法です。

がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響がありますし脱毛や嘔吐(吐き気)、感染症といった副作用もあります。

副作用を最小限に抑え、がん細胞に作用させるには身長・体重から計算した適切な量と効果が確認された抗がん剤の組み合わせが大切です。

一般的には外来での治療となりますが、入院で行うこともあります。

使用される抗がん剤には、次のようなものがあります。

・術前化学療法、術後化学療法、転移・再発乳がんによく使用されるアンスラサイクリン系抗がん薬を使用するAC療法、EC療法。

・タキサン系抗がん薬を使用するTC療法。

・点滴ではなく飲み薬であるフッ化ピリミジン系抗がん薬。

・転移・再発乳がんにはエリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビン。

以前は、5-FUという抗がん薬を併用するFEC療法やCAF療法が乳がんに広く用いられていましたが、5-FUの副作用が危惧されているため現在では勧められていません。

なお、内分泌療法と化学療法を同時に行うことは稀です。

>抗がん剤の副作用について

分子標的治療

HER2陽性と診断された乳がんに使用される抗HER2療法、内分泌療法と同時に使われる分子標的治療薬、遺伝性乳がん卵巣がんの方に使用するPARP阻害薬、「血管新生阻害薬」とも呼ばれるベバシズマブ、骨転移のときに使用されるデノスマブやゾレドロン酸があります。

抗HER2療法には、以下があります。

内分泌療法と同時に使われる分子標的治療薬には、下記のものがあります。

遺伝性乳がん卵巣がんの方に使用するPARP阻害薬として、オラパリブがあります。

BRCA1またはBRCA2の病的バリアントを保有する遺伝性乳がん卵巣がんのがん細胞は、二本鎖DNA修復機構が欠失していることがわかっています。

オラパリブを使用することで、DNA損傷が修復されず、がん細胞は死に至ります。

「血管新生阻害薬」とも呼ばれるベバシズマブは、がん細胞に栄養や酸素を運ぶ新しい血管がつくられるのを防ぐ働きがあります。いわば兵糧攻めを行うお薬です。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫の力を復活させ乳がんに対抗する免疫チェックポイント阻害薬には、抗がん剤と併用されるアテゾリズマブとペムブロリズマブがあります。分子標的薬として分類されることもあります。

アテゾリズマブはPD-L1を標的にするお薬、ペムブロリズマブはPD-1を標的にするお薬です。

がん細胞はPD-L1という物質を出してリンパ球(免疫)から逃げ、リンパ球はPD-1という物質を出してPL-L1を待ち構えています。

PD-1とPD-L1が結合すると、がんに対する免疫が弱められます。

PD-1とPD-L1が結合しないようにするのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

しかし、PD-L1は正常な細胞も使っているため、免疫チェックポイント阻害薬を使用すると正常細胞も免疫細胞から攻撃されてしまう特徴があります。

PD-L1陽性のトリプルネガティブ転移・再発乳がんに使用されることが多く、抗がん剤と併用されます。

免疫療法(その他免疫療法)

免疫療法

免疫チェックポイント阻害薬も免疫療法のひとつですが、免疫細胞療法や、NK細胞療法といった免疫療法もあります。

免疫細胞療法は治療を受ける方の血液を採取し、免疫細胞を抽出、増殖、活性化させ、体内に戻す方法です。

ご自身の免疫細胞を戻すため副作用が起きにくいと考えられています。

リンパ球に含まれる免疫細胞であるナチュラルキラー細胞とも呼ばれるNK細胞を使った療法がNK細胞療法です。

NK細胞は生まれつき身体にある免疫のひとつで、細菌やウイルスなどの病原体や、がん細胞を見つけると攻撃を始めます。

他の免疫細胞と異なり抗体を介さずに直接攻撃してくれる特徴をNK細胞は持っています。

NK細胞療法も免疫細胞療法と同じように、治療を受ける方の血液を採取し、NK細胞を抽出、増殖、活性化させ、体内に戻します。

なお、保険適応外のため治療費は高額で、施設により変わりますが300万円ほどかかります。

樹状細胞療法

樹状細胞療法

樹状細胞とは免疫細胞のひとつで樹枝状の細胞突起を持っており、全身に分布しています。

がん細胞などを認識した樹状細胞は、MHC分子を介して抗原情報をT細胞(免疫細胞であるリンパ球のひとつ)に提示し、T細胞はがん細胞を攻撃するようになります。

この樹状細胞に、がんの特徴を認識させて、T細胞にがん細胞を攻撃するようにするのが樹状細胞療法です。

樹状細胞療法では採血を行い、樹状細胞を育てます。育てた樹状細胞にがん抗原を取り込ませて樹状細胞ワクチンを作成します。次に体内に戻し体内のT細胞を活性化させて、がん細胞を攻撃します。

費用は170万円から200万円で健康保険は使用できません。

がんワクチン療法

がんワクチン療法

がんワクチン療法も、樹状細胞にがん抗原を持たせてT細胞を刺激し、T細胞でがん細胞を攻撃する方法です。

大きく3つに分けることができます。

ペプチドワクチンは「がんの目印」であるがん抗原となる「ペプチド」と「アジュバント」と呼ばれる物質を注射します。体内にある樹状細胞がペプチドを食べます。すると、樹状細胞は「がん抗原」を提示するようになりますので、T細胞が活性化し、がん細胞を攻撃します。

遺伝子ワクチンは「がん抗原」のもとになる遺伝子(DNA、RNA)を注射します。注射された遺伝子は樹状細胞に取り込まれ、がん抗原が含まれるタンパク質が作成されます。すると、樹状細胞表面に「がん抗原」を提示するようになりますので、T細胞が活性化し、がん細胞を攻撃します。

樹状細胞ワクチンは、まず採血し血液の中から免疫細胞を取り出し体外で増やします。次にがん抗原となるペプチドかがん抗原のもとになる遺伝子を樹状細胞に食べさせて、体内に戻します。体内でT細胞が活性化し、がん細胞を攻撃します。

がんワクチン療法は、保険適応外であり研究途上の治療法でもありますので、費用は数百万円ほどかかります。

温熱療法(ハイパーサーミア)

がんワクチン療法

体外から電磁波を使って、がん細胞を加温する治療法です。

がん細胞(腫瘍)は43℃以上で死滅する特性があるため、がん細胞を加温することで効果を発揮します。

正常な細胞を加温すると血管が拡張し、血流が増加、熱を逃しますが、がん細胞(組織)では血管が広がらず熱でがん細胞が壊死します。

がんの種類に関係なく効果が得られる、早期だけではなく再発・転移がんにも適応可能、副作用が少なく回数制限もないメリットが、温熱療法にはあります。

温熱療法は放射線治療や抗がん剤と併用されることが多いです。

なお、乳がんの他、頭頸部がんや皮膚がんなどに温熱療法が適応されています。

ラジオ波またはマイクロ波を使った局所、領域加温のみ保険適応されており、6〜9万円です。なお、全身ハイパーサーミアは自費診療となります。

統合医療・自然療法

統合医療・自然療法

通常医療=現代西洋医療に、東洋医療をはじめとする世界中の医療や伝統医療など、ありとあらゆる医療を組み合わせた医療が統合医療です。

安全性と有効性が確認できていない方法もあるため、慎重に考える必要がありますが、効果が確認されている統合医療もあります。

乳がんで精神的に辛い思いをされている方は多くいらっしゃいます。

効果のある統合医療や自然療法は気分改善やQOL(生活の質)向上にも役立つため、治療に取り入れて損はありません。

>末期がんも治る時代。末期がんで余命宣告されてから治る事例も多数

手術を受けられない乳がんの状態と対処法は

乳がんで手術が受けられない状態のとき、一般的には抗がん剤などのお薬による治療がメインです。

また、美容的に乳がんの手術を受けたくない、乳がんの手術を受けるけれども綺麗な状態にしたい、乳がんの手術痕が嫌といったお声もあります。

先進医療の中には、いわゆるメスで切り裂いて切除する方法以外の手術方法もあります。

乳がんの手術が困難なケースとは?

乳がんの手術が困難なケースとは?

乳がんは、手術でがんを取り切ることが基本の治療ですが、全身にがん細胞が転移する状態まで進行すると、手術でがんをすべて摘出することができなくなります。

また、全身の状態によって手術が困難とされるケースもあります。

手術ができない場合は、抗がん剤や内分泌療法などのお薬を使った治療がメインとなります。

なお、乳がんの場合、ステージが進行していても、がん細胞の量を減らすことを目的で手術を行うケースがあります。

標準治療以外の先進医療

標準とされている治療法以外にも、次のような先進医療があります。

がんの中に細い針状の電極を差し込んでラジオ波帯の電流を流し、発生する熱を利用しがんを焼灼する治療法が「ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」です。

手術に比べ患者さんの身体への負担が比較的少ない特徴があります。

しかし、ラジオ波焼灼療法は、がんの大きさや形状など適応できる範囲が限られており、ラジオ波焼灼療法では適応できない範囲の方に行うと再発や転移を起こすリスクが高くなります。

なお、ラジオ波焼灼療法は、すでに肝臓がんで実施されている治療法です。

「集束超音波治療(FUS)」は、体外から超音波を照射し腫瘍に超音波を集束させがん細胞を焼灼する治療法です。

超音波ひとつは弱く温度は上がりませんが、数百本を1箇所に集めることで60〜80℃の熱を発生させます。がん細胞は43℃で死滅する特性を使った療法と考えてよいでしょう。

熱を与えるのではなく逆に温度を低下させてがん細胞を破壊する「非切除凍結療法(非切除冷凍凝固療法)」があります。

凍結には痛みを感じにくくする鎮痛作用があるため、他の治療法よりも非切除凍結療法は、痛みが軽い特徴があります。さらに、凍結させた状態を超音波で確認することができるため、がん細胞を取り残す可能性が低くなります。

しかし、がん細胞の大きさが1cm以下で悪性度が高くないタイプのとき適応可能なため、範囲が限られている点と、保険適応ではなく自由診療となる点がデメリットです。

「レーザー(特殊なレーザーでがんを焼き切る)」という方法もありますが、あまりメジャーな方法ではないので、適応には十分気をつけるようにしましょう。

現代医療以外の統合医療や自然療法で治る例も

乳がんの治療法は数多くあり、現在も研究が進められています。

現代医療、いわゆる西洋医療だけに限定せずに、もっと視点を広げると、さらに治療法が広がります。

特に乳がんに対しての統合医療の治療成績は良く、身体に負担が少ない状態で乳がんの治療を進めることが可能です。

また、既存の医療と組み合わせて治療を進めることもできるため、治療法がなくて困る可能性が低くなりますし、ステージⅣからの完治も不可能ではありません。

>末期がんも治る時代。末期がんで余命宣告されてから治る事例も多数

末期の乳がんの食事の注意点

末期の乳がんの食事の注意点

乳がんはエストロゲンという女性ホルモンが関与していることが多いため、食事には十分注意する必要があります。

また、閉経後の肥満は確実に乳がんのリスクを高めます。アルコール(お酒)も乳がんにマイナスですので、避けるようにしましょう。

末期の乳がんの場合、食事制限はないことがほとんどです。むしろ体力維持のため、感染を防ぐためエネルギーやタンパク質、ビタミン、ミネラルが不足しないような食事が大切です。

ただし、がんばって食べようと思うあまり、食事が辛くなってしまうこともありますので、無理は禁物です。

食べやすい形状にする、飲み込みやすい状態にするなどの工夫をしてもいいでしょう。

乳癌(乳がん)手術ができない場合や緩和ケアを勧めらた時の選択肢

末期の乳がんで、もうこれ以上手術ができないと言われたり、ターミナルケア(終末期ケア)を医師から勧められたのなら、現代医療ではこれ以上がん治療ができなくなったというサインです。

「現代医療で手を尽くしましたが、現代医療ではもう治療することはできません。もうすぐ死ぬから死ぬ準備をしてください」という意味としてもいいでしょう。

しかし、人生を諦める必要はありません。

在宅緩和ケアで訪問医療で乳がん治療にのぞむ

在宅緩和ケアで訪問医療で癌治療にのぞむ

在宅看取り(自宅で死にたい)を考えている方にとって、有望な選択肢のひとつで、現在増加傾向にあります。

ホスピスや緩和ケア病棟に入院し、在宅でも対処できる痛みになってから退院し、在宅(訪問医療・訪問介護)に切り替える方法もあります。

しかし、在宅で可能な治療は限られていることもあり、緩和ケア病棟(ホスピス)と似たような形での医療と介護となる可能性が高く、末期の乳がんが治癒するとは考えられません。

緩和ケア病棟へ入院して治療にのぞむ

緩和ケア病棟へ入院して治療にのぞむ

末期の乳がん治療を諦め、意識を保ったまま人生の最後を幸せに過ごしたいのなら、緩和ケア病棟(ホスピス)への入院がおすすめです。

人生の最後を苦痛なく尊厳をもって迎えられるようにするのが緩和ケア病棟の役割ですから、積極的な治療や延命措置はせず、余命を如何にして過ごすのかということがメインとなります。

とはいえ、末期の乳がん他の部位にも癌が転移しており、緩和ケアを受けずに過ごすのは、非常に痛みが強く、辛い最後(痛みと苦しみの絶望の中、亡くなる)を迎えることになりますから、緩和ケア病棟への入院も選択肢のひとつとして考えておきましょう。

>あなたや家族が緩和ケア・ホスピスをすすめられた時の対処法と検討すべきこと

現代医療以外で統合医療も組み合わせて乳癌治療にのぞむ

統合医療

乳がんステージ4の末期がんで、緩和ケアを勧められても治る唯一の可能性が、統合医療です。

末期の乳がんでターミナルケア(終末期ケア)を医師から勧められたのなら、現代医療ではがん治療が不可能という意味ですが、がん治療を諦める必要は全くありません。

視点を広げた統合医療であれば治療する方法があるのに、現代医療(保険)では治療できないと統合医療を知らない医師が勝手に判断しただけです。

残念なことに、現代医療では施しようがない末期がんに対しての現代医療以外に対しての知見が乏しい、言葉を選ばず言うならば保健医療しか知らない医師に「これ以上の乳癌治療は不可」と判断されると、医師の権威性や医師に従うべきという心理が働き多くの方は諦めてしまいます。

統合医療を組み合わせれば治る可能性のある末期の乳がんであっても方法を知らずに、がんの治療を諦めて死を待つのは、誤った選択といっていいでしょう。

>末期がんも治る時代。末期がんで余命宣告されてから治る事例も多数

もし自分や家族が乳癌(乳がん)になった時の対処方法とは?乳癌に関するご相談、不安に関するご相談を受け付けております。

一般社団法人日本がん難病サポート協会では、末期の乳がんで治療法の選択に悩んでいる方、抗がん剤を使用したくない方に対してのご相談を受け付けております。自分に合ったがん治療に対する向き合い方や治療法に出会うお手伝いを全力でサポートさせていただきます。

乳癌(乳がん)に関するよくある質問

Q1:乳がんステージ4からでも治りますか?

A1:乳がんのステージ4は、がん細胞が全身に転移した状態ですが、ステージ4から完治を目指すことは可能です。

実際、多くの方がステージ4から回復されています。

Q2:乳がんの末期症状で手術できないと言われました。どうしたら良いでしょうか?

A2:一般的に手術ができない場合、乳がんは内分泌療法や抗がん剤による治療が行われます。

乳がんの末期となると、従来の治療法では選択肢が少なく、また数ヶ月程度の延命しか得られません。

視点を広げ統合医療を追加することで完治を目指せます。諦めないことが肝心です。

Q3:乳がんのステージ4の末期から完治できる確率はどのくらいですか?

A3:乳がんステージ4の末期から完治できる具体的な確率は調査されていません。

ゼロでないことは確かですので、末期だからといって諦めず治療をすることが完治への道です。

Q4:乳がんの手遅れの症状は?

A4:腰や背中、肩の痛み、お腹に水がたまる(腹水)、わきの下の痛み、むくみ(浮腫)といった症状が乳がんの手遅れの症状とされています。

しかし、乳がんの末期となって初めて自覚症状が出てくる方もいれば、早期の段階で乳房のしこりやわきの下の痛みに気が付く方もいらっしゃることから、一概にはいえません。

Q5:ステージ4の乳がん末期の生存率、余命は?

A5:乳がんのステージ4の5年生存率は40%程度、10年生存率は16%程度です。

乳がんは比較的進行の遅いがんということもあり、生存率も他のがんよりも高い傾向があります。

末期であっても生存率は0%ではありません。諦めずに治療することが肝心です。

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